~こだわりのおやじ「津弥や(つやや)」を語る。~

神谷:「津弥や」のお店のデザインをやるにあたって、神戸のお店でうどんを頂戴したんですが、美味しかった。 あと、おばんざいの部分はどんなんなんだろうって・・・。
基本的に「津弥や」は、内田さんみたいな“こだわり大人の不良のたまり場”を創りたいっていうコンセプトもあったわけだから。
おじさんたちってうるさいじゃない。こういう食べ物とかさ。どうせたくさん食べるわけじゃないのに、言う事だけはいちいちうるさい。 そうするとまぁ、おじさんたちに居酒屋のメニューみたいなの出しても駄目だし、かといって料亭みたいなご飯出してもだめだし。 どうするんだろうって思ったら。そんな時に内田さんにおばちゃんがやってるお店に連れて行かれて・・・。
そこで例の“じゃこせん”とか、いろんなものを食べさせてもらって、またそこのおばちゃんのキャラがよくって。 とにかく、内田さんはこのおばちゃんの味を絶賛してた。で、「なんでこのおばちゃんの店なの?」って思っていたら、 まさか、このおばちゃんが「津弥や」に来てくれるって言われて、びっくりした。信じられませんでしたよ。 内田さんのプロデュース力って凄いですよね。とっぴょうしもない!と思いましたね。

内田:だから、大丈夫って言ったでしょ(笑)

神谷:でもまぁすごいタイミングですよね。おばちゃんは前のお店で16年もやってて、お店閉めて来るって。
内田さんから言われたとはいえ、なんでおばちゃんお店閉めてこっち来んねん。みたいな。慣れ親しんだところだし、お店の経営者じゃないですか。 「津弥や」に来ると雇われになる。考え方からすれば、モチベーションも変わるわけじゃないですか。でも「津弥や」に来て、鉄板おばんざいを作ってる! あのおばちゃんの鉄板おばんざいがあって、「津弥や」のうどんがあって、金重さんの器があって。で、この内田さんがいて・・・(笑)
「これは面白いよな」って思って。こういうお店が名古屋にあってもいいよなって思えるぐらい良いお店だよね。 「大人のうどん屋」って、大阪とかにはあるんだけど、名古屋ってなんか今一歩そうじゃなくて、うどん屋はうどん屋みたいな。 とにかく1階はおばちゃんのオープンキッチンで、入ってすぐにおばちゃんが正面に立って元気よくやってくれてるって感じ。 2階はどうやってこういうおじさんたちが悪だくみするのに完璧な部屋を創るかっていう・・・。
他のお客さんが来ても、おじさんたちが悪巧みしても気付かれない部屋を作るとか、そういうことばっかりずっと考えてた。デザイン考える余裕がなかったぐらい。

内田:思うツボだったわけ。考え方から入ってもらうっていうのが大事なんだよね。 パパパッと図面書かれた日にはがっかりするわけだよね。考え方から入って欲しい。

神谷:だから、デザインはすぐ出来たけど、平面図はすごいキャッチボールしました。 平面図が出来るまで、いろんなバージョンをやって。

金重:でも楽だったでしょ?自分が普段考えてることをそのまますればいいんだから。オヤジの悪巧み・・・(笑)

磯部:この間もお客さんが来てくれて。若い子。女の子、男の子2人連れで2階に来て。 そこの格子の部屋とか掘りごたつとか見て、「いい感じのお店ですね」って言ってくれました。
構想段階で内田さんと神谷さんといろいろなお話をして。京都の建具換えっていうのありますよね。夏と冬と建具を変える。 そういったニュアンスの斬新な感覚を持ってきてもらって。本当に顔が変わるお部屋というのを内田さんも頭をひねり、こうしたらいいんじゃないかと。 神谷さんもいろいろデザイン的な事をやっていただきましたし、収納したときにもデザイン的にまた良くなるっていう。 本当にお客さんも感激できるような部屋が提供できるようになりました。

内田:難しいよね、4人で来た時は4人で自分たちのお城を創りたいし、30人で来たら30人でわっと盛り上がりたい。 だけど空間は一つだから。これをじゃぁどうやってお客さんに提供していくか。
もし本当に間仕切りを変えていけたら、その期待に応えられる。お客さんの為に部屋を手作りする。手作り感が出るわけだよね。それが多分ウケてるんだと思うんだよね。

神谷:間仕切りをはずせば大部屋で、間仕切りをはめれば個室になるっていうのは、誰にだって出来る話じゃないですか。 外した建具をどこにしまうか、収納の場所がロスなわけですよね。ここは、しまった建具が絵になるんです。 しかも、使ったら建具になる。しまっても絵になる。で、フレキシブル。そうすると建具の寸法っていうのは、その中で一番効率のいい寸法でないと。 ここできっちり4枚ハマるのは、場所を変えてはめたとき絵になるのか?じゃぁ3枚引きにした方がいいんじゃない?5枚引きにした方がいいんじゃない? 5枚引きにした方が2人部屋も作れるし、6人部屋も作れるし…こういうシミュレーションを結構やりましたね。ここの設計をした女の子が何度もやめたい、やめたい。 できないって何度もギブアップしそうになった。

内田:実際打ち合わせに来てくれて、大粒の涙をこぼして悔しがる。 磯部さんが「内田さん、女の子泣いてるよ。女の子泣いてるやん!」って何回言った?

磯部:ほんとにね。

内田:だけど、最後の最後にはその子がね、完成した時には一番喜んでくれて・・・俺たちが一番喜んでるんだけど。抱き合って喜んだね。

神谷:その子は1級建築士で、ここの仕事を責任者として任された子で、デビュー作みたいなもんだったんだよね。 ここのレセプションの日にうちの会社で花束を用意して「あいつ、このお店がデビュー作だから、このお花を内田さんから渡してもらえないですか」って言ったら、 「あいつにあげるこんなデカイ花束、用意しとんねん」って彼女にあげる大きい花束用意してて。それ聞いて、「もうこの花捨てときます」って。 僕らのは小さな花束だったんです。でも内田さんは大きな花束を用意してくれてて。 おっちゃんやるなぁみたいな(笑)

内田:彼女がデビュー作だっていうのもわかったしさ、神谷デザイン事務所に帰れば苦労してるだろうし、 こっちに来たらきたで、ボロクソに言われるし。そのはざまで苦労してるのもわかるし。 だけど、絶対に彼女、これで成長するな、成長させてあげたい!ここの仕事やってよかった!ひとつステップを上がるきっかけにしてくれたらうれしいなと思って。 途中で挫折したらそれで終わりなんだけど、それを乗り越えてくれたっていうのが、すごくうれしかった。

金重:この人はそういうところ持ち合わせてるね。仕事となるとうるさくて嫌な奴だけど、優しさを持ってるよね。こんな変な人なのに。

内田:自分でもそう思ってるけどね・・・(笑)